日々静物画写真

リンゴを手で割って二つにする

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 先日、知人の所を訪れた際にリンゴがいくつかあって「持って帰れ」と言う。皮をむくのが面倒でなかなか食べるに至らないと。

「皮など剥かず、かぶりつけば良い。」と言うと。「若い頃ならそうもしたけれど、口を大きく開くことも面倒だ。せめて半分ぐらいであれば食べない事もないかも。・・・」というのでリンゴの一つを取り、膝のうえに添えて、両手で半分に割った。

 「こんなことの出来る人は初めてだ、・・・」と驚ろかれた。

 

 私が幼かった昭和30年代、秋の終わり頃、寒くなり始めると父の実家から木の箱に入ったリンゴが届き、冬にはおやつになっていた。小学校に入る前の子供に、まるまる一個のりんごは、食べきれない。そんなとき包丁を持つまでもなく、父が手で半分に割ってくれた。

 丸一個のりんごは、はじめの一口が齧りつきにくいこともあり、中学の頃には、自分で割って食べていた。

 

 大人になると木箱に入ったリンゴが日常ではなくなり、買ってきたものは包丁、ナイフで切り皮を剥いて食べる。それでも、ひと冬に幾度か手で割ってみる。まだ「自分の手でリンゴを半分にすることが出来る。」そのことに「あの頃の父に負けない体力がまだ残っている。」そんな思いが。少し安心する。

 

余談。

 手で割ったリンゴの断面は、なかなかに奇麗に思う。