日々静物画写真

「静物画写真」はじまりの一枚

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 年明けて、写真データを保存しているHDの容量に余裕がなくなってきたので、新しいHDにデータを移動させる作業をしていた。画像を確かめながら。はっきりと覚えているもの。こんなもの撮っていたんだと思うもの。そんななかの「これ・・・」という一枚。「石の上に置かれたキウイフルーツ」、「日々の静物画写真」と私が呼んでいる、今の一連の写真を始めたきっかけの一枚。

 その時まで、私の住む埼玉を中心に、花の名所といわれる所をたずね写真を撮っていた。当時すでに団塊の世代がリタイアの時期を迎え、写真を趣味とするアマチュアが集団を形成して、花の名所にあらわれていた。鎌倉など観光地の旧跡で三脚の使用が禁止されはじめたころ。スマホは、まだ現れていなかったのでカメラの存在が強く意識されてた。
 できるかぎり他の人たちの撮る写真とは、違う見方の写真を意識するも、代わり映えのしないものしか撮れていなかった。
 そこで、できるだけ人のいないところ、人の行かない場所、人のいない時間を撮影場所に選ぶ事を意識した。

 その中で出会ったのが、さいたま市緑区大崎にある「さいたま市園芸植物園(農業者トレーニングセンター園芸植物園)」。埼玉は、さいたま市立盆栽美術館があり、盆栽家が集まる盆栽町や庭木の生産地であるなど園芸植物の一大生産地。
 園芸に携わる農業者のための研修施設である園芸植物園は、様々な園芸草花、花木の林、温室、製作予算に応じた和風庭園のひな形など園芸植物の育成を意識して維持されている植物園。入園無料で一般の人も見学ができる。ただ何時行っても職員以外の見学者をほとんど見かけない。

 園芸植物園をひとめぐりした午後の遅い時間、蓮池のほとりに、休憩所として用意された石畳の「あずまや」に腰をおろすと足下にキウイの実が数個。頭の上を見上げると、藤棚ならぬキウイの果樹棚。キウイの実がたくさん成っていた。

夕方のコントラストの強い夕陽。石畳の上のキウイの実。そのときに「そうだこれを撮るという方法がある。」自分の日常の中の手の届くところにある物を撮ること。絵画の中で言えば「静物画」ができる。なぜか確信できるものがあった。
 ほぼ次の日から、本当に次の日から、歩き回って撮影対象を探すことをすっぱりとやめ、自然光のもと花や果実や生活用品を撮る「静物画写真」をはじめた。そしてほどなく、右足を故障して歩く事が困難になり、撮影対象を求めて歩きまわる撮影は、全くなくなってしまった。
 そんな私の象徴的な一枚が、この「石の上のキウイフルーツ」。